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卒業式の日 5

あーーー、くそ、ダメだ。
くだらないことを考えると、よけいに瞼が重くなってくる。
手で頭を軽く叩いたところで、睡魔は襲ってくる。

つい、うつらうつらと船をこぎ始めると。

……隣から。
なにやら不穏なオーラが漂ってくるのが、わかる。
わかってしまう俺が恐ろしい……。
そろり。
俺は何気なさを装いつつ、隣に目線を寄越してみると。

あっちゃーー……。
何だよなぁ。
こいつ、俺のストーカーか?

俺の睡魔をどうして感じ取るのか。
またもや隣の奴が睨みをきかせてきているよ、おい。
気持ち悪いにもほどがあるだろう。
はぁ。何だよ、もうなぁ。
さっきまであんなに泣いていた奴が、もう怒りの表情だ。
こいつ、やっぱ、変だわ。

睨み返そうとしたけれど、向こうの方が一枚上みたいだ。
俺の視線に気づくと、ふん、と云わんばかりの表情を作りやがる。
まるで、出来そこないを指導するお偉いさん、といったところか?
優等生はさすがに違いますことよ、ってとこか。
あーーー、何だかムカつく!
内申なんてもう関係ねーだろうよ。
俺みたいなのを指導したところで、どうってことないんじゃないの?
と、思いつつも。

なんでか、俺の心は平然としていた。
これって、あきらめ?
いやいやいや。最後の最後で揉めたくもありゃしないし。
眠気もそがれた。
それだけだ。きっとそうだ。

俺は腕組みして、正面を見据えた。
隣の奴は俺の態度に満足したのか、また檀上を凝視し始めた。

はぁ。
もう勘弁してほしいわ。
すること無くて、椅子に長時間座ってるのって、マジないわ~……。

他人の表情は見えるけれど、体は見えない。
気分悪くなるから見たくないと思って目を瞑りゃ。
隣の奴から、批難轟轟の表情の嵐。
やってらんねーっちゅうの。

だったらさ。
多少の気持ち悪さは我慢して、
今度は俺がそいつを観察してみようと思った。
さっきのお礼、というもんじゃないけれどさ。
暇つぶしでもしとかないと、また寝そうだし。

こいつのことだ。
今度俺が寝たら、次は足蹴り。
それでも効かなきゃ、最後は頭を殴ってきそうだよな。
そう、目に涙をいっぱい溜めて。怒りに震えて、わなわなと。
まるでチワワのように。
そういや、チワワって、でかい目に水の膜が張ってて、ぷるぷる震えて……。
まるで、こいつのようじゃね?
想像しただけで、
ぶふっ!
思わず吹き出してしまった。
げっ、しまった……。
恐る恐る隣を見る。

けれど。
隣の奴は、それくらいのことには何も反応しなかった。

なんだ? こいつ。
普通だったら、不謹慎だろう! 
とか云ってくるか、睨み付けてきそうなもんなのにな。
こいつの基準というのがわからん。
まったくもって、真面目な奴ほど、何考えてんのかすら、わからんわ。

正面の一点を見据えて、ただただ呆けたような。
いや、恍惚しているような表情だな。
俺の存在など知らない、と云わんほど真顔になっている。
一言一句、聞き漏らさないかのような真剣さに見えるよな。
ノートとかあったら、がりがりとメモっていそうな奴だな。
あ~、真面目な奴って、どうしてこうも他人の言葉を信じたがるのかね。
そんなに檀上の奴はカリスマなのか?

だったら最初からそういう風に真剣に聞いておいて、
不真面目な俺をほっておいてくれりゃいいのにさぁ。

一体なんだっていうんだか。
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