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卒業式の日 4

誰も俺がそんなことを考えているとは思わないだろう。
そりゃそうだ。
こんな式が早く終わってほしい、って考える奴は、多少はいるだろうけれど。


とはいえ、周りを見回す勇気は今の俺には無かった。
顔は見えても、顔から下が霞かかったように見えるのだけはごめんだったからだ。

なんていうの?
気分が悪くなりそうなんだよ。
頭がぐらぐらして、足元がふらふらして。
あぁ。そうだ。
酔っ払いとか、そういう感じとおんなじなんだろうよ。
うぇ。
大人になっても、酒なんて飲みたかねーわな。

つまらない感想をもたらしてはいたが、気が晴れるわけじゃない。

どうにかこうにか気を取り戻し、
俺は隣の奴を憐れむように、見やってやろうとしたが。

あ??
組んでいた両腕が思わず、ずり落ちそうになるくらい、
思いっきり脱力して、椅子から転げ落ちそうになった。

なぜなら。
そこには感極まったように涙ぐんでいる顔があったからだ。

んだ? こいつは。
おいおいおい。
マジ、ねーわ。

そんなに檀上の話しは感動モンだったのか?
俺には全くその声すらもが聞こえないというのに。

そいつは鼻をすんすんと鳴らしながら、
視線を前に向けて、真っ直ぐに聞き入っているじゃないか。

そんなつまらないことが俺の頭をかすめたのは、ほんの数分だっただろうか。

誰にも邪魔されることなく、式は滞りなく、順調に規則正しく流れていく。
次第に俺は、隣の奴のことすらどうでもよく思えてきて、
段々と、睡魔が襲ってくる。

あぁそうか。
さっきの俺は、こうやって寝落ちしたんだろう。
納得しかけて、ようやく俺はまた、深い睡眠に陥ろうとしていた。

檀上の奴等の声はまったく聞き取れない。
よくこいつは涙ぐめるほど、その声に感情移入出来るもんだ。
嫌味じゃなくて、マジで感心するわ。

ふぁぁぁ。
大きなあくびとともに、俺はまた夢心地になっていく。
そうだ。俺には檀上の奴等の声が、よく聞こえないんだ。
子守唄にしか、聞こえ、ないんだ、よな。

自分の母国語にすら聞こえない声を、どうしてだか何も疑問がわかなかった。

元々、視力よか、聴力にゃ自信が無いせいでもあったのかもしんねーな。
目が見えなくなるよりも、耳が聞こえない。
その不自由さがまるで違うだけだ。
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