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Dish 10


“ったくさ。折角の滋養がさっきので全部パァだよ。
少しでも旨いもん、体内に入れなきゃならん”
腹を立てた皿でしたが、その後に自らの上に乗っかった、いつもの美味しい食材がヒビから入るのを感じると。
一気に食材を平らげたのです。



目の前で自分の料理が消えたのを目撃した料理長。
いきなり大きな声で笑い始めました。
「ははは!! お前は正しかったんだな」
腹が痛いと、ひーひー云いながら笑っています。
「わ、笑い、ことじゃ、無いです」
必死に料理長にしがみついている見習いは、居たたまれずにいました。

「もしかしたら、付喪神かもしれないな」
はぁ、と一呼吸着くと。
「ま、まさかぁ」あんなのは、おとぎ話の世界じゃないんですか?
見たくないけれど、目線を外せば何が起きるかわからない。
見習いは怖いながらも、皿から目が離せません。

「で、でも、どうして俺の料理は……」
「まずかったんだろう」きっぱりと告げる料理長に、
見習いはその場にへたり込んでしまいました。
そのショックは恐怖だったのか、尊敬する料理長に認められないことだったのか。
見習いにはわかりませんでした。

ほれ、と料理長はいきなり見習いに皿を寄越してきます。
けれど見習いは、一瞬躊躇して落としそうになりました。
気味悪いのと尊敬する料理長が渡してきたこと。
瞬時に天秤にかけると、見習いは皿をきちんと受け取っていました。

「うぁ。何するんですか!?」
それ以上触るのすら嫌で、皿をつまんだ見習いに、
「神っていうくらいなら、大事にせんとな」
見習いに、料理長は意地悪い顔を向けます。

「貸してやる。お前がきちんとした料理人になりたいというのなら。
これ使って精進してみたらどうだ?」
「え?」見習いの、さも嫌そうな声がかかってきました。

「化けもんじゃなくて付喪神っていうなら、舌も肥えてるんだろうよ。
お前の料理が上達すりゃ、その皿だって認めてくれるってなもんだ。
それを使って、腕をあげろ」
ははは。笑ってその場から料理長は去っていきました。
その場には、皿を手にした見習いが、ぽつんとしゃがみ込んでいました。

料理長から受け取ってしまった皿です。
捨てるわけにもいかず、しぶしぶ手元に置いていた見習いでした。


最初は気味悪がっていたけれど、皿が噛みつくわけでも襲ってくるわけでもない。
それがわかって以来見習いは。
料理長の言葉に従って、地道に、その皿に認められるよう、努力しました。


それから、その皿は引き継がれ、重宝されるようになりました。




“まったく馬鹿よね。アイツ。捨てられなかっただけいいけれど”
静まり返った深夜の食器棚の中で、いつものように言葉が行き交います。
“そうよねぇ。結局がっついたせいで、毎日の楽しみ無くしたんだから”
“自業自得”
“帳尻が合ったんじゃないの?”
“ま、あたしらだって、いつ老皿になって、この場から去るかわかんないんだから。
今を楽しんどかなきゃね“
“そういう意味じゃ……”
“何?”
“アイツはいつこの場所から去るかわからないあたしらよりも、幸せじゃないの?
少なくとも、あたしらよりは長生きできそうよね”
“あたしらよりも、いい身分を手に入れたってこと?”
“さぁ、どうだろうね”



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