FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Dish 9

次にその異変に気付いたのは、見習い料理人でした。

「本当に料理が消えるんですよ! この皿、捨ててください!」

料理長は笑いながら、先輩たちにからかわれているんだ、と軽くいなします。
けれども、見習いは納得しません。

呆れた料理長でしたが、この忙しい時期に見習いでも辞められたら困ると考え、
見習いが納得するように付き合うことにしました。

「じゃ、コレ。置いてみろ」
渡されたのは、冷蔵庫から出したばかりのトマトでした。
恐る恐る見習いは皿の上にトマトを置きます。
表面上は何も起きません。



“ひゃ! うぉ! いきなり!? なんだ!!”
皿は一瞬で目を覚ましました。
体の上に冷たさと重さを感じ、身の毛もよだつほど驚きました。
けれど少しすると冷静さを取り戻した皿は。
また何か乗っかったのか。
とヒビに入るものを味わおうとしましたが……。
ですが体のソレはヒビの中には何も入らず、ただ冷たく、重いだけでした。
“何コレ?”
皿はそれ以上とくに反応することなく、重さに耐えるしか出来ません。



置かれたトマトは何も変化しませんでした。
「ほら、何も起きないじゃないか」
料理長の言葉に、けれど見習いは納得しません。
じゃぁ、と目についた見習いの料理を乗せてみることを提案しました。

皿の上のトマトはどかされ、今度は見習いの料理が皿の上に乗せられます。




ヒビの中に浸みこむ物体に、皿は一瞬喜んだのもつかの間。
“うえ、何これ? 激マズ……”
思わず皿は、自らのヒビをふさがんばかりに体を縮こませます。
ヒビの中にはどんな汁1滴すら入りませんでした。



「何も変化しないな……」
料理長はそれでも納得しない見習いに、一つ料理を作ってやることにしました。
腹がふくれりゃ、変な妄想だって治まるだろう。
そう考え、見習いには指導と称し、キッチンに残っている食材で料理を作ろうとしたのです。

「ほれ。その皿、寄越せ」
「は、はい」
あれだけ食材を乗せても変化しなかった皿の上。
見習いはほんの少し納得しつつありました。
そうして料理長の置く芸術的な料理に感嘆するころには、恐怖も失せていました。

すっかり元気を取り戻し、
「いただきます」
元気よく見習いが食べようとした瞬間。
皿の上に置かれた料理は突如消えてしまいました。
呆然としている見習いの前の皿は、料理が消えた以外、何の変化もありませんでした。

「へ?」
見習いは眼をこすりながら、何度も皿を見ました。
「お前、今、見たか?」
料理長が見習いに声をかけると、震えた声で、
「み、見えません、でした」
ぼんやりしていた見習いでしたが、我に返ると料理長にしがみ付きました。
「ぎゃぁ! ば、化け皿だ!」
ようやく驚きの声を上げました。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。