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皿2(表)

きらきらする目の見習いを見て、料理長は嬉しくなりました。

そうそう、こういう顔を見るのが好きで始めた仕事だ。
なのに今じゃ、厨房に籠っちまっている。
ふむ。料理長はちょっと考えてから、見習いに声を掛けました。
「特別だ。俺が手本を見せてやる。他の奴等には内緒だぞ」

料理長は腕まくりをし、見習いが使った皿とフライパンを洗うよう指示します。
その間に、簡単なメイン料理を作ろうと冷蔵庫から食材を出します。
「お前には、ソースの作り方を特別に教えてやろう」
これで見習いの気持ちがほぐれてくれるなら、安いもんだ。
そうも考えた料理長。
料理長は鍋にソースの材料を入れ、手際よくフライパンで肉を焼き、
あっという間に料理は完成しました。


僕のために、料理長自らが料理を作り、指導し、それを食べさせてくれるなんて。
まるで夢のようだ……。
見習いはさきほどまで、恐れていたことなどすっかりと忘れ、
料理長の流れるような手さばきを、うっとりしながら眺めていました。

「どうせなら、この皿に盛りつけようじゃないか。
それでお前が食べりゃ、安心もするだろう」

そうして取り出された皿に、熱々の肉と冷たいソースをかけ、
料理長は、ほれ、と皿を見習いに渡しました。

単なる肉を焼いた塊が皿の上にあるだけ。
それなのに。
どこから見ても一枚の絵画のように美しく、肉の塊は皿の上に映えていました。

ごくり。見習いの喉が知らずの内に鳴ります。
料理長の料理など、普段見習いが食べられるものではありません。

見習いが震える手で皿を受け取り、その出来栄えをうっとりと観察していると、
「冷める前に食っちまえ」
頭の上から料理長の声が聞こえてきます。

見習いは惜しく思いながらも、フォークとナイフを持って、肉を切ろうとした瞬間。

かちゃん。
皿の上に、ナイフとフォークの合わさる音が聞こえるだけでした。
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