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皿1(表)

「やっぱり変ですって!」
見習いコックは料理長をひっぱり、料理がのった皿の置かれているテーブルまで連れてきました。
そこには芸術品と呼べる、綺麗な盛り付けされた料理が並べられています。

ある皿の前までやってきて、見習いが指を差しました。
ぽつん、とその皿にだけ、料理が盛られていません。
料理が盛られた多くの皿の中で、その一皿だけ、空っぽなのです。

「料理が跡形もなく無くなっているんです!
料理が確実に消えるんです!」

確かにその皿の上にだけは料理の影の形もなく、付け合せのソースすらなく、
まるで洗ったかのように綺麗なものでした。

それを目にした料理長は、
「誰かが空の皿を置いたんだ。お前は新人だから、からかわれているんだ」
全く取り合ってくれません。

見習いは真っ青な顔をしつつ、無言で首をぶんぶんと左右に振り、
「消えるんです!」
と、すでに泣き出しそうな状態でした。

見習いの必死の形相に、はぁ。と料理長は溜息をつきましたが、
「……それは、お前の目の前で起きたんだな?」
呆れつつも確認を取りました。

見習いは料理長の白衣を引っ張りつつ、コクコクと今度は上下に頭を振り続けます。
料理長は頬をボリボリかくと、
「じゃ、俺がやってみる。
何も起きなかったら、お前の見間違いってことで、いいか?」
見習いを納得させようと、料理長は尋ねました。
しかし見習いは、今度は上下左右、どちらにも首を振らず、
料理長の白衣を両手で握りしめ、呆れ顔の料理長の顔をじっと見据えていました。

「まぁ、わかった」
料理長が溜息交じりにそう云うと、その皿にトマトを1個乗せてみました。

1分、2分……。何も変化は起こりません。

「ほれみろ、お前の勘違いだろう」
見習いは、それでもぶんぶんと首を左右に振ります。
「料理が、消えるんです!」

どうやったら気が済むんだろうか?
そう思った料理長の目の先に、あるものが入ってきました。
「だったら、そこにあるお前の料理でも乗せてみたらどうだ?」
料理長が指した先には。
練習で作った見習いの料理が、冷たくなったフライパンの上にありました。

見習いは料理長の白衣から手を離し。
おそるおそる、自分の料理を皿の上に乗せました。

1分、2分……。何も変化は起こりません。

「? あれ?」
見習いも、さすがに首をひねりました。
けれど納得はしていません。

「ほれみろ。何にも起きないだろう?」
料理長は安堵しつつ、
「この皿、俺が気に入ってんだから、文句をつけるなよ」
見習いの頭をガシガシと撫でつけ、盛り付けた皿をじっと見ます。

「…それにしても、お前の盛り付け、なっちゃないな」
そう云い終わる前に、料理長がちょいちょいと、皿の上の料理を手直しすると。
幼稚園児の絵が、超一流の画家が描いた絵に変身するがごとく、
ものの数秒で綺麗に仕上がりました。

ほう。
その盛り付け方を見て感動した見習いは、その瞬間、恐怖を忘れていました。
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