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引き寄せの法則って?

健全な肉体を持っていれば、便秘せず。
食べ物は消化されて排泄されて、体外に出て行くのに。
入って出てくだけなら、必要無いと思ったりもしませんか?
でも必要ですよね。
健全な精神を持っていれば、何が起きても感情の便秘は起きず。
感情も消化されて排泄されて、体外に出て行くのに。
何で、必要と見なされる重要度が食べ物よりも低いんでしょうかね?

経験や感情も、自分を作り上げるための栄養素。
大切にしないといけないのに。

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額縁 4-7

ん?
なんじゃ?
何だか変な雰囲気だのう。

お?
泣き出したと?!
これは、どういう展開じゃ?
曾孫の告白に、喜んでいるようには思えない泣き方じゃな。
ワシの曾孫が気に入らなかったというのか?

曾孫はオロオロとしておる。
何をしておる!
とりあえずは声を掛けんか!
女性が泣いているというのだぞ!

お?
おい、女に慣れてないお前が。

……はぁ。
いきなり女性に抱きつくって、そりゃないだろうよ。

彼は曾孫の行動に、肩を落としていました。
それでも彼に何が出来ることもありません。
しばらく曾孫の振る舞いを眺めていました。

それでもまぁ。
泣く女性を慰めることが出来るほどには、成長したということか。

彼は遠くからぼんやりと曾孫を眺めると。
少し心が落ち着いてきました。

小さかった少女は大きくなり、成長した女性になった。
小さかった曾孫も大きくなり、少しはまともに成長したんだろう。
お?
一丁前に、ワシを睨み付けてくるとは。
はっ、はっ、はっ。愉快じゃのう!
曾孫もついに男になったということか。
しかしのう。
焼き餅を焼く相手が、違うというものではないか。
はぁ。我が子孫なだけに、情けない。
ずれている二人は、ある意味お似合いなのかもしれんのう。

二人はこの先どうなるのだろうか。
ワシはよけいなお節介をしたもんかいなぁ。

少女を見守っていた肖像画の人物は、この先二人を見入ることになるとは。
現時点では彼にも予想がつかないことでした。


(自分達が引き寄せた、と思うことも。
天界(?)とか、見えない存在の力のせいということがあるともあると)

引き寄せの法則って?


よく云いますよね。
死んだらあの世に物は持ってけない。
持ってけるのは、経験(体験)感情だけ。

要は、経験や感情しか。
一生の中で、いや、来世でも。
ずっと手にしていることは出来ない。
手にできるのは、経験や感情だけ。

それらが今の自分を作り上げる食べ物(栄養素)のようなもの。
そして、それらが来世での自分を構成するための土台ということ。

額縁 4-6


『この肖像画の人物は、あなたの前には居れますが、隣には立てません』

そりゃそうだろう。
ワシはこの絵の中から、動くことは出来のだからなぁ。

『これからは』

額縁を横に置いたか。
しっかし、あんな邪魔なもん。
よくまぁ、持ってきたのう。
よく、あんなもん、見つけてきよったわ。

『僕が。彼の代わりに』

ふむ、ふむ。
ほう。何と云うかのう。

『あなたの前ではなくて、あなたの隣に立つことを、許してもらえますか?』

おお!
女性の前に膝をつくとは、中々やるのう。
お、手を取ったぞ!

『ずっと、あなたが好きでした』

よし! よく云った!
ワシの曾孫もとうとうやりおったか。
感無量だ。

彼はほとんど泣きそうになっています。
元はそこにいる女性を笑顔にする、ということが目的だったのに。
彼はいつの間にか、曾孫の告白を応援する。
ということに、目的が変わっていました。
すっかり曾孫の告白に集中していた彼は、彼女のことなどどこへやら。
曾孫の告白が終わると、彼は心を落ち着けていました。
しかしそんな彼の心を知るわけでもなく。
彼は安堵する間もなく、空気はいきなり変わりました。

引き寄せの法則って?

最初はこれが書き出しだったのに。
色々書き直していく内に、前ふりが長くなったorz…。
重複してたらごめんなさいね。



本心から望むもんだったら来るよ!
って云われてますよね?

で、自分では本心から望んだつもりが。

違うモノばっかり引き寄せられている。orz…。
と、思っている。
(無意識下では望んでいるものが来ているんだと思いはしますがね)

で、思考方向を変えてみることにしたんですよ。

まぁ、アチコチでよく云われているから。
引き寄せがうまい人にとっちゃ、常識でしょうけれども。


とりあえず、欲しいモノは無視!
とりあえず。欲しい感情を望む!
にしてみようかと。

なぜか?


額縁 4-5

『おねえちゃん。こっち、向いて』

馬鹿じゃのう……。こいつは何を云っとるんじゃ!
おねえちゃんって、近所の子供じゃあるまいし。
こう、もう。もっと他に云いようがあるだろうに。
あぁ、曾孫の緊張感がこっちにまで伝わってくるわい。

手も口も出せないもどかしさに彼の手は、汗が握られました。
曾孫の緊迫感が、彼の中にも満ちていくようでした。

『やっとこっちを向いてくれた』

頑張れ! 坊主!

どうしようも出来ない目の前の光景に。
はらはらしながらも、彼は曾孫を応援していました。

『あなたを小さい頃からずっと見ていました』

よし、云った!
それにしても。
そういえばなぁ。
嬉しそうな顔をする曾孫の顔を見るのも、久しぶりな気がするわい。
ワシが投げた石とはいえ、どうにかうまくいってほしいもんだのう。

『あぁ、……』

お? 彼女は驚いているみたいだぞ?
こりゃ、脈ありかの?
こりゃ、曾孫の作戦は効いたんだろうか?
いや。まだ、わからんな。

『え? あの絵はあなただったの?』

え、絵、って洒落かい!
いや、そんなことはどうでもよい!
ワシが、そ奴であるわけないわい!
驚いてたのは、そこだったのかい!
お主がワシを見た年は、こいつは何歳だと思っているんだ!
何だか、ずれた子だのう。

彼は彼女に突っ込みを入れるが、彼女にそんな声が聞こえるはずもなく。
曾孫にも聞こえる訳もなく。
とりあえずは成り行きを見守るしか出来ません。

『小さい頃からあなたを見ていました。初恋でした』

曾孫のアプローチ方法はかなり間抜けだが。
まぁ、よっし! よく云った!

彼は小さく、絵の中で、ガッツポーズをとっていました。

引き寄せの法則(欲しいモノって何?)

他人との比較で、自分が足りないからと努力して手に入れられる人はよいのですが。
普通。努力しよう!と思うよりも。
他人に対する攻撃や、これさえあれば他人より上に行ける(カモ?)って、物に手が出たりしませんか?
結局、自分の内面を見れずに、内面の不足を見れずにいる。
からなのでしょうねぇ。

何で見たくない?
だって、自分が傷つくのは嫌じゃないですか。
自分で自分を拒否しているのに、
その上他人からも拒否されたくないじゃないですか。
認めてほしいじゃないですか。
今まで培ったもの、全部駄目出しって、アリエナイでしょ。
(いわゆるプライドってやつですな)
などなど。

でもね。
自分のソコ(底)を見れる人のみが、前に進めるんですよね……。



額縁 4-4

何度も何度も。
少女は彼の前にやってきました。

日を追うごとに少女は成長し、いつしか綺麗な女性に成長しています。
けれども、彼女の顔から。その陰りが消えることはありません。
この国で生きると決めても、彼女はどこか寂しそうでした。

いつも彼の前に、彼女はただぼんやりと立っていました。
彼はそんな彼女を心配していましたが。
その頃には。
彼は曾孫を使い、少女に対して小石を投げることをしなくても。
曾孫は自分の意志で、彼女に近づこうと行動していました。


しかし、我が曾孫とはいえ。
こんな茶番劇を考えるとは。
粋ではないなぁ。
もっとうまいやりようがあっただろうに。
それでもまぁ、お手並み拝見といこうか。

彼は二人のやり取りを、景象を眺めることにしました。

引き寄せの法則(欲しいモノって何?)

他人と違うのを嫌う人っていうのは。
結局、自分に自信が無い現れでしかないんですよね。

そういう人にいじめられている人というのは。
単に嫉妬されているだけです。
あなたには光る何かがあるんです。
そう思いましょう。
(そうでない人もいるかもしれませんが)

いじめっ子はあなたに置いて行かれるのが怖い=>
いじめることで、あなたをその場に留めようとしている。
それだけ。

あなたに対し、無意識の恐怖を持っているだけです。
あなたの才能に。

いじめる人は、無意識にそれを感じ取っているだけです。
自分に無いものを持っているあなたの光を。

自信を持ってください。
というよりも。
いじめっ子があなたには「光る何かがある」と証明しているんです。
ブラボー!
他人はあなたを認めている。
欲しいもの、自分じゃわからないもの。
いじめっ子である、あなたが苦手な他人が、あなたを認めてくれている。
他人に認められることで、自分の自信を得ようとしているのならば。
それだけで、目に見える形で、簡単に自信が得られますよね!


そう思えば、自分の不安や内面を見ようと少しは思えますよね。
自分の強みを見てみようという気には、なれます、かね?

額縁 4-3

それから数年後。
あの少女はまた彼の元にやってきました。

少女は、この国に移住するためにやってきた。
そう彼に話してきました。

生まれた国を捨ててまで、何があったのだろうなぁ?

彼は少女を心配し、再度曾孫を働かせることにしました。

『おねえちゃん。また来ていたの?』

なんじゃ? その気の抜けたようなセリフは。
少女とはいえ、曾孫が幼いとはいえ。
仮にも相手は女性じゃぞ!
声を掛けるにしても、もう少し、もっと。
この少女に望ましい言葉というものを、選べないもんなのか。
あぁあぁ、我が曾孫ながら情けない。
ワシが若い頃は、その女性に合った絢爛たる言葉を、歌を、掛けたもんだがのう。
女性一人すら喜ばせることも出来ないとは。
はぁ。

彼は曾孫を使い、少女を笑わすように仕向けました。
しかし今の彼は、曾孫が少女を笑わすのとは違った意味で、
曾孫の態度に対し、落胆していました。
彼には曾孫の行動に、少女に対して小石を投げることは出来ても。
彼には曾孫の行為を左右・支配することは出来ません。

『えぇ。この絵に、毎日逢いにきているの』

少女はただそう呟いて。
それきり何も話しをすることを、しませんでした。

引き寄せの法則(欲しいモノって何?)

比較するがゆえに、自分のいいところが見えない…。
それが一番の問題。
特に日本人は、一律であるのをよしとする文化の国なので。
自分の特化したところを、なぜか押さえようとする…。
社会生活で、皆が同じところに足並みそろえたとしても。
ある意味しょうがない。
と思えませんか?

例えば。
皆が同じ作物だけしか作らなかったら?
買ってくれる人がいなくなりますよね。
だって、自分でも作っているんですから。
同じものだったら、他人から買う必要は無いですよね。
で、ヘタすりゃ、過剰在庫になって捨てるとか…。
そう考えると、他人と同じである必要は無いかも?って。
そう思えてきませんか?
他人と同じ作物を作って、プラスαしたいと思いませんか?
(思わなくてもいいけれど)

皆が作ってない作物を作ったほうが。
皆に喜ばれますよね?
たとえ周りから人とは違う、変人って思われたって。
食べてみたら、美味しかった!というのであれば需要もあるでしょう。


自分のいいところを探す=他人が持って無い強み=個性=役に立つ=>
回りまわって喜ばれる
そう繋がるのではないでしょうか?

額縁 4-2

それでも彼は、少女が自分を見るように足止めをさせました。

さて、これから先は。
どうしたものか?
ふぅむ。そうだ!

彼はあることを閃きました。

この少女とおんなじ年齢の子を合わせれば、
どうにかなるかもしれないのう。
おあつらえ向きに、幸いに。
ここには小さい子供が一人いるではないか。
ワシに似ている子供だ。
ちょっとくらいは、ワシの力でどうにかなるであろう。

思慮すると、彼は一つ石を投げることにしました。


『おねぇちゃん。この絵、好きなの?』

彼は自分の曾孫を、この少女に近づけようと考えたのです。

『そうね。この肖像画の人、素敵よね』

けれども少女は振り向かず。
結局彼の試みは、空振りに終わりました。

ワシの力が強く、少女の足止めのほうが勝ってしまったのかのう。
まぁしかし。少女が少しでも話せる状態ならば、大丈夫であろう。

彼はそう思いました。

引き寄せの法則(欲しいモノって何?)

引き寄せの法則に必要なのが「感情」と云うよりも。
感情が欲しいから、感情を引き起こすためのモノが欲しい。
のではなかろうか?と思えてきたのですよ。

昔、どっかのCMに。
「物よりも思い出」
とかあったような気がしましたが。


他人との比較が無意識にある。
比較する気持ちは感情ですよね。
本来は感情が欲しいのに。
なぜか感情ではなく、物が欲しくなる。

何でか?
物は簡単に目に見える、確実な豊かさの象徴だから。
他人に自分の見えない感情を説明するよりも。
目に見える物を見せる方が納得してもらいやすいですよね。


大抵、比較や不足の恐怖という感情が、無意識下にあるんですよね。
でも、それは目に見えない。
だから、わからない気がする。
なので、物を欲する。
けれども、当然のことながら、心の渇きは癒えない…。

芸術に心揺さぶられるというのは、心の渇きがあるせいかもしれませんね。
心に不足しているからこそ、そういう感情を欲していた!と。

でもね?
揺さぶられることもないくらい精神が病んでしまった場合は…。
速攻病院行ってください!
…話しが、ずれましたが。


皆と同じに出来ない自分が仲間外れのようで怖い。
(人間は社会生活で成り立つ生き物です。
人との比較や仲間意識は当然のことなので、悪いことではありません)

他人と比べて不足がある(と思い込んでいる)
不足しているのは「物」だ!と思い込むから、不必要な物を得ようとする。
けれど、見せかけの物は、本心が欲しい物じゃないから、欲しいモノが得られない。
代わりに、本心が注目しちゃった、不安という気持ちだけが得られてしまう。

不安にはそういう気持ちがあるんだと思いますが。

何が問題だと思います?

額縁 4-1

つまらんもんだな。
毎日変わらない日が続く。
一生、このままなのだろうなぁ。
って、ワシの一生はいつまで続くもんなんだろうなぁ?
はっはっはっ。

ひとりごちるが、誰も答えない。
そんなある日。一人の客がやってきました。

この辺りでは見かけない人間だな。
それも小さなお客様か。
どれ。

目を向けた彼の前を通り過ぎようとした少女は、
不機嫌そうな顔をしていました。

おやおや、どうしたというのか。
子供とはいえ、女性だ。
その顔を、笑顔にしてあげたい。
しかし、ワシはここから動けないし、何も出来ないなぁ。
ううむ。
そうじゃ!
だったら、この少女の足を止めてみるのはどうだろうか。

彼は眼力を持って、少女の目に訴えかけました。
すると少女は足をとめ、彼を凝視し始めました。

まぁ、これでよしとするか。

彼には少女の足を止めることが出来ても。
彼には少女に言葉をかける自由がありません。
ただ、その少女を見ているだけしか出来ませんでした。


引き寄せの法則(欲しいモノって何?)

お話しの間に入れるのもなぁ。と思いつつも、思う所があり。
途中に書き込みしました。暫くはごっちゃに入ります。
こっちが好きと云ってくれる人もいらしてくれるので。
書いちゃいます(笑)
お付き合いくださりませ。

さてはて、最近も色々な人のお話しを聞いていますが。
が!

自分の本当に欲しい物って、わかりますか?

私は多分、まだよくわかってないと思うのであります。
だって。本当に欲しい物、ですよ?

例えば。と書いていて。
自分の例を出したら。
かなーり、落ち込んできたので、自分の例はやめときます。

多分、普通の人の場合だと。
一例ですよ?
お金が欲しい⇒お金で買える○○が欲しい⇒
⇒周りが持っているのに自分が持って無い不安⇒……⇒
⇒不足感が恐怖となっている。

この一例だと、最終的に欲しい物は。
お金よりも不足感を埋めるものが欲しかった。
となりますよね。

お金の所に、恋人とか、健康とか、色々なので置き替えられると思いますが。
(例えば、○○の所に。
お金で買える豊かさが欲しい・恋人から得られるやすらぎが欲しい・
健康であることで得られる自由が欲しい)
で、○○の部分に入るのって、皆違うと思うんですよ。
でもね?
云えるのが。
○○の部分に入る理由と云うのは、あなたの気にかかる事。
不安な事。
そして、他人が○○なのに、私は持ってない。という比較的な気持ち。
物より感情。というのが多くないですか?

欲しいモノ=(本当は)感情

額縁 3-8

え?
え?!
一体何が起きた?
ど、どうしたんだ?
俺の告白の返事がそれかい?!
泣くほど嫌だったのかい?!

いや、ともかく。
どうにかしないといけない!
じゃなきゃ、誰かが飛んでくるだろう!

俺は立ち上がると、彼女を抱きしめていた。
泣き声を漏らさないようにするために。
というのもあったけれど。

何よりも。目の前の彼女が、大人じゃなくて、
迷子になって不安になっている小さい子供のように思えていたからだ。
瞬間的に子供をあやすように、慰めようとした。
頭をぽんぽんと撫でると、その泣き声は大きくなり、次第に嗚咽と変わる。

彼女は俺をはねのけようとはしない。
……嫌なら普通は逃げるなりするよな?
こうしているのは、正解、なんだよな?

自問自答しながらも、俺は自分の身体に感じる彼女の感触を確かめようとした。
凛としてしっかりとした綺麗な印象があったけれど。
今はこの腕を離したら壊れそうなくらい、頼りなく見える。
それは触れてしまったせいなのか?
彼女が一つ泣くたびに、血が通い、体温を持ち、人間味を帯びてくるのがわかった。

何だかほっとして、俺は一気に力が抜けてしまった。
理想は理想だったってことで。
あぁ、彼女も俺と同じ人間なんだなぁ。
目の前で泣いている彼女を見ながら、こんなことで安心感を持った俺って。
弱さを見ることで、彼女に対して人心地がつくなんて。
どうなんだよ。

きっと、この先、どんな彼女を見たって。
彼女を嫌悪することは、ないんだろうなぁ。
やっぱりこの人に惚れているんだろうなぁ。


そう思うと愛おしさが募り、抱きしめる腕に力が入ってしまった。
やばいよなぁ。
その感情を抑えるように。
彼女の頭を覆うように、俺は彼女を抱きしめて。
肖像画の曾じいちゃん顔を睨み付ける。
絵は何も云わないのにな。


告白の結果は……。

彼女が泣き終わってから、聞くしかないか。
はぁ。それまでこの状況か。

彼女の体温と匂いを感じると、俺はやるせない気分になっていく。

なんか、この状況。
ある意味拷問に近いよなぁ。

それだけが、今の俺にとっての唯一の不満だった。


(ストーカー? ここまで想われるのって。どうでしょう)

額縁 3-7

「この肖像画の人物は、あなたの前には居られますが、隣には立てません」
そう、俺は、彼女の前じゃなくて。
隣にずっといてあげることだって可能なんだ。

「これからは」
額縁を外し、絵じゃなくて、俺は一人の人となった。

「俺が。彼の代わりに」
曾じいちゃんの代わりに、俺が。

「あなたの前ではなくて」
大きく息を吸って、吐いた。

「あなたの隣に立つことを、許してもらえますか?」
自然に、俺は彼女に片膝をついていた。
そうして彼女の片手を取り、彼女の目をしっかりと見て伝えた。

「ずっと、あなたが好きでした」
精一杯、彼女に告白した。

彼女は茫然としたまま、動かない。

返事はもらえない。
やっぱり、外したのか……?
でもこの状況下。すぐに引き下がるというのは。
大概に恥ずかしい……。
ううーん。どうしたものか。


そう思いながら、彼女の顔を眺めていたとき。
彼女の瞳から、一筋の涙が頬を伝ったのが目に入った。
その雫は窓から零れ落ちる光に反射して、きらきらと輝いてみえる。

あぁ、綺麗だなぁ。
涙すら、こんなに艶やかに見える。

泣いていることの理由を考えず、そんな呑気なことを思う俺は馬鹿だろ。
わかっていても、その光景から目を逸らすことが止められない。
俺は確実に、この人に惚れているんだろうなぁ。
と思った途端。

不意に彼女が泣き出した。
それも、子供が爆発するように大きな声で!

額縁 3-6

絵の入ってない額縁に、自分を入れながら。
「あぁ、……」

彼女のこれは、どういう反応なのか?
よく読み取れない。
驚いているのかな。

しばらくすると、
「え?」
なんだか素っ頓狂な言葉が返ってきた。
彼女は、やっぱり驚いていたみたいだ。
絵と俺を見比べている。
そりゃそうだろう。

「あの絵はあなただったの?」
あの肖像画の人は、曾じいちゃんなんだけれど。
仕方ないか。
家族からは散々似ているって云われてるんだから。
赤の他人が間違うのは当然だ。
俺は首をゆっくりと左右に振った。

あぁ。なんだか冷静になると恥ずかしくなってきた。
顔が熱くなっているのが自分でもはっきりとわかる。
深呼吸だ。落ち着け。

「小さい頃からあなたを見ていました」
落ちつけ、自分。
ゆっくりと、彼女に逃げられないように、近づいた。

「初恋でした」
肖像画の曾じいちゃんは。
目の前に誰がいたって、話しかけも、笑いかけもしない。
けれど、俺は彼女に話しかけることも、笑いかけることだって出来る。

額縁 3-5

よっしゃ!
彼女が来たぞ!
落ちつけ、落ち着け。
あ、でもさ、彼女のこと、今は何て呼べばいいんだ?

って思っている間に、彼女はいつものように一枚の絵の前に足を止めた。
ええい、迷っている暇は無い!

「おねえちゃん」
ん? 何云ってんだ、俺。
おねえちゃん。って、何?
うわぁぁぁぁぁ!
頭を抱えて床に転がりたいくらいだ!
咄嗟にそう云っている自分がいて恥ずかしい。

あぁ、しかも!
彼女はまたこっちを向いてくれないじゃないかよ!
馬鹿か? 俺……。
はぁ。
意を決し、再度チャレンジだ。

「こっち、向いて」
俺は額縁を持って、祈るように彼女に向かった。
彼女が俺を見てくれるように、願った。
ゆっくりと、だけれど、彼女は俺の方を向いてくれた!
よっしゃ!
心密かにガッツポーズをしていた。

「やっとこっちを向いてくれた」
何年越しだったんだろう。
嬉しくて、思わず本音が出てしまった。

はっ!
いけない、いけない。

けれど、これからしようとしていることは。
……やっぱり恥ずかしいのが勝っている。
だから卑怯でも、彼女から逆光になるように立った。
一つ深呼吸して、告げた。

「あなたを小さい頃からずっと見ていました」
とりあえずは、彼女の反応を見てから考えることにしよう。

彼女は初めて、俺の方を見てくれた。
正面から見た彼女の顔は、思った通りの綺麗な顔だった。
俺はそれだけで嬉しくて、彼女に近づいた。
もう、どうなってもいいや。
変な人扱いだって、友達になれりゃ、それだけでいいや。
彼女の顔を見て、そう思った。

ミッションスタート!
俺は自分を鼓舞して、彼女の前に近づいた。

額縁 3-4

それから何年経ったんだろう?
どんなに声を掛けたって、一度たりとも振り向いてもらえない!

……本当に、気の長い話しだよな。
俺は狂っているとしか思えない。

彼女は年を増すことに、身長も髪も伸びて、化粧もして、綺麗になっていた。
ずっとあの人の横顔に恋している俺がいるのは疑いない。
はぁ。
願わくば、彼女に恋人がいないこと。

でもさ、こんな寂れた小さい美術館に一人で来るってことは。
絶対に恋人なんかいないはず。
でも、この肖像画をずっと見ているってことはさ……。
この人にとったら、こいつが初恋の人物ってことなのか?

苦い顔で、俺はその絵を睨んでいた。

ううーん。

そうして閃いた。
上手くいかなきゃ、ただの恥ずかしい人間だよな。

けれども。
あーー! もう!
恥ずかしい人間でもいいさ。
俺はこの美術館の跡継ぎなんだし、云い訳はなんとでもなる!

よし!
となれば、準備にかかるぞ!

額縁 3-3

「おねえちゃん。また来ていたの?」
忘れやしない。あの肌の色と髪の色。
少し大人っぽくなっている横顔に、心が一気に高揚した。
落ち着け、黙れ、俺の心臓。
深呼吸しながら、俺は自分に云い聞かせた。
そうして彼女に向かい、声を掛けた。
振り向いてもらえるように、願いを込めて、ゆっくりと。

「えぇ。この絵に、毎日逢いにきているの」
でも、彼女はやっぱり俺に顔を向けてはくれない。
なんでだ?
横顔しか俺は見ることが出来ないのか?
心に靄がかかる。
これ以上ここに居たら、闇に覆われてしまいそうだ。

ふいに視線を彼女の洋服に落とすと、あることに気づいた。
着ている服は、この街の高校のもの。
彼女はこの街の住人なんだろうか?
だったら時間はある。
焦るな。
今日はそれ以上話すのを止めて、その場から立ち去ることに決めた。


それからが大変だった!
どうしたらいいんだろう?
俺は身もだえなららも、必死に考えた。
でも妙案は思いつかない。

……、あぁ、どうしたらいいんだ!

けれど単純なことしか浮かばない。
真っ直ぐにアプローチすればいい。
それだけ。

そう。俺にはそれしか出来ないんだから。
腹をくくったけれど、それでも心は納得しない。

でもそうだよな。
劇的なことをして、驚かせたいよな。
妙案は思いつかなかったけれど。
俺は、彼女に対してびっくりさせるようなことがしたかった。

額縁 3-2

「おねぇちゃん。この絵、好きなの?」
俺は意を決し、その女の子に話しかけた。
内心、ドキドキ緊張しながらも。
外見、どうでもないフリの冷静さを装って。
その肖像画から、その顔を、視線を、離そうとした。

「そうね。この肖像画の人、素敵よね」
けれど女の子は。
俺のことを見ることもなく、ただ肖像画だけを見ている。

ちくしょう! 絶対に振り向かしてやるぞ!
俺はその子の横顔を見ながら、思いを決した。


美術館の跡を継ぐのも、曾爺さんの顔に似ているのも。
この小さな国、小さい街から出ることが出来ないのも。
何もかも、嫌だった。
けれど。
あの日から、そんな考え方が変わっていっていた。

家に居れば、あの不思議な色の肌や目、髪を持っている、あの子に逢える。
だったら俺は、ここの楔になっても構わないかもしれない。
そう思った。
けれど。
けれども美術館を訪れていたあの子を、それから二度と見ることがなかった。

なのに。
俺はずっと忘れられなかった、あの横顔を。
だから俺は、毎日のように、家にいるようになった。


転機が起きたのは、それから何年か経ってからだった。

額縁 3-1

毎日毎日どこにも行けず、つまらない。
窓の外には通りを歩く人が見える。
はぁ……。
あれは路地の向こうに住んでいるじじいだ。
ただ、それだけ。
退屈な一日が、今日も過ぎていく。

何も変わらない。
何もかも。いつもと同じ時間に起こる日常。
変わらない景色しか見えない。
頬杖をつきながら、室内をぼんやりと眺めた。
小さい国の、小さい街の、小さい美術館。
俺はそれが嫌いだった。

この美術館は、家の持ち物で、遊び場でもあり、家だ。
毎日おんなじ絵に囲まれている。
最初と最後に目に入るのが、曾じいちゃんの肖像画。
上から目線で、見下されているようで。
いつも嫌だった。

絶対にでかくなってやる!
絶対に、曾じいちゃんを見下してやる。
俺は心に誓ったんだ!


そんなある日。
この辺りでは見たこともないような人間がやってきた。
肌の色も、髪の色も、俺が今まで見たこともない人間だ。
俺はすぐに興味を魅かれて、その人間を観察していた。

その内の二人は、入ってきて、すぐに出ていった。
一人、女の子が残された。

置いていかれて、泣くもなく、騒ぐでもなく。
その女の子は、一日中。ずっとある肖像画を見ていた。
それは俺が嫌いな肖像画だ。
何でそんなもん、ずっと見てるんだ?
何でか知らないけれど、胸がむかむかする。
なのに、その女の子から目が離せなかった。

だから、それが、なんか。
俺の闘争心に火をつけた。

額縁 2-8

「この肖像画の人物は、あなたの前には居られますが、隣には立てません」
ええと? この人は。いったい何を勘違いしているんだろうか?

「これからは」
その人は、私の前に立って、手にしていた額縁を置いた。

「僕が。彼の代わりに」
その人は、私を前に立ったまま、

「あなたの前ではなくて」
大きく一呼吸をして、

「あなたの隣に立つことを、許してもらえますか?」
私の前に膝をつき、

「ずっと、あなたが好きでした」
告白してきた。

えぇぇぇ!?
何が起きた?

けれど、こんな訳のわからない状況に答えてくれる人は。

……当然、誰もいなかった。


私は決して、この肖像画の人物が好きだったわけでもない。
この肖像画は、私の幸せになるための枷になっていただけ。

この絵の前にくれば、何かがわかるかもしれない。
幸せになれるかもしれない。
ただ、そう思っただけ。

最近では習慣なのか、意地なのか。
そんな感覚で来ていたようなもの。

違うか。
最後の幸せだった頃を、振り返りたかったのかもしれない。
家族でいた頃を、取り戻したかっただけなのかもしれない。

両親を見ていたからこそ、ずっと信じていた。
男女は簡単にくっついて別れるものだと。
永遠に続く愛情なんてもの、無いって思っていた。

けれども、目の前の青年は。
顔を真っ赤に、して。
私の何を知るでもなく、長い間私を想ってくれていた。
そんなことを、恥ずかしげもなく、まっすぐに云ってきた。

永遠は無いにしても。
この人が、どれだけ私を見ていてくれたか知らないけれど。

彼が云う、過去から今。
その私を。
私自身が拒否していた私を。
私が無くして欲しかったものを。
私の代わりにずっと持っていてくれた人だ。

彼が私に長い間持ってくれた愛情は。
目には見えないけれど。
確かにここにある。
確実なものなんだ。

私は両親に、あの時、あの時期。
愛されていたのかな。
ううん。違う。愛されていた、んだ。
きっと。

私はふいに、頬に温かいものがつたうのを感じた。

え?
あぁ。私はようやく、泣くことが、出来たんだ。

そう自覚した途端。
私はその人の前で、大泣きをしていた。
悲しい涙なのか、嬉しい涙なのか。
泣いた経験が無いからわからない。

けれども一つだけわかったことが、ある。

私は間違え続けていた過去を、ようやく清算出来たのかもしれない。
ということ。

そうして、ようやく初めて。
私は前に進めるのかもしれないって、そう思った。

そう。目の前にいる人のおかげで。


(人生は、何が起こるかわからんということですな)

額縁 2-7

「あぁ、……」

そこには、私が毎日のように見ていた肖像画の人物が、いた。

絵から人が飛び出てきたのか、と驚きで言葉に詰まり、
ただ茫然としていた。

が、しかし。

絵から人が飛び出すなど、ありえっこない。
たとえここがおとぎの国のようであっても。
ここは現実なんだから。

私はすぐ我に返った。
それが誰か。
私に推測出来るのは一つだけだった。

目の前の人物。
実は、肖像画のモデルだった。
そんなベタなこと。

「え? あの絵はあなただったの?」
ようやく出た言葉は、かなり間抜けだっただろう。
けれども頭の中でくだらないことを考えるのが、功を奏したのか。
ようやく私の頭が落ち着いてきた。

青年は、私の言葉に首を振ることで返事をした。
ぼんやりと私はその人を見ていた。

何だろうなぁ、この人。
少し、頬を赤くしている。
息を少し、吐いて。
そうして、私の顔をじっと見ている。

……! もしかして、変質者?
その考えが頭に浮かび、少し怖くなって、後ずさろうとした瞬間。

「小さい頃からあなたを見ていました。初恋でした」
思いがけない事を云われた。

へ? え? な、なにを、いきなり云っているんだ?
どっきり? 何? 
私は動揺が隠せなかった。

右を、左を向いても。
何もない、誰もいない、気が、する。

い、いや。そ、その前に。
これは、誰だ?
私を見ていたって、え?

目を黒白させながらも、目の前の人は勝手に一人で話し始めていく。

いままで穏やかだった空気はいきなり壊され、
私はこの状況に、まるでついていけないでいた。

額縁 2-6

私はこの地での生活が、いつしか馴染んでいた。
遊ぶ場所も、マーケットも、色々な場所を覚えた。
けれども、この美術館に足を運ぶことが止められないでいる。

私はいつものように肖像画の前で。
ただ、ぼんやりと視線を前に向けていた。

「おねえちゃん」
また、声が聞こえてきた。
けれども、その声は。
私が今まで聞いてきた、小さい子供の声ではなかった。

私にかけられている声ではないだろう。
もしくは、いつものような空耳だろう。
そう思って、私は声に返事をしなかった。

「こっち、向いて」
またしても声が聞こえてくる。

その声は。
今まで聞いていたような、女の子っぽい可愛らしいものでもなかった。
その声は。
幼い子供ではなく。
はっきりとした、凛とした、男の人の声だった。

私は自然にその声のする方向へ、顔をふっていた。

声のする方を向くと。
「やっとこっちを向いてくれた」
再び声がかけられた。

逆光でよく見えなかったけれど、そこには私よりも大きな人が立っている。
何かを手にしている。
その人は、そのまま私のそばにやってきた。
そこでようやく全体像が見て取れた。

すらりとした長身の、スーツに着られているような、
あどけない顔をした男の人だった。

「あなたを小さい頃からずっと見ていました」
その人はそう云うと。
手にしていた額縁を、自分の前に掲げた。

額縁 2-5

「おねえちゃん。また来ていたの?」

あれ? 以前にもおんなじことが、あったような。
軽い記憶障害に陥ったように、私の頭はぼんやりとしている。
あぁ、でも。どうでもいい、か。

「えぇ。この絵に、毎日逢いにきているの」
私はそれだけ云って、言葉を噤んだ。

暫くすると、私の隣に人の気配は消えていた。

今のはいったい、何だったんだろう。
ううん。きっと、気のせいだ。

私は声がした場所を見ることもなく、肖像画を見ながら惟う。
そうして思い出した。

もしかすると、私に声を掛けてくるものは。
小さい頃の、私、なのかしら?
そうだとすると、この国に呼んだのは、私自身?

私はこの国に来ても、両親の離婚という問題から逃げられないのかしら。
私は嫌なことから逃げたくて、外国(そとくに)に来たのに。
どうあがいても、逃げられないのかしら。

でも。本当に逃げたかったら。
こんな地になんて、私はやってこなかったはず。

私は逃げたいのか、向き合いたいのか、よくわからなくなっている。

落ち込みながらも、ただ。
その肖像画を眺めることしか出来ないでいた。

心の中で肖像画に聞いても。
その絵の主は何も応えることはなかった。

額縁 2-4

私はその後、またこの国にやってきた。
この地に根を下ろすために。

本当は。
離婚した、両親のいる国に居たくなかったから。
だからこの国にやってきた。
両親のいない国なら、どこでもよかった。
そう思ったのに。
なのに、辛い思い出を残したこの国に、私はきている。

何でだろう?
ま、どうでもいいか。

私はほぼ毎日、この美術館に行くようになっていた。
どうしてだかわからない。ただ、自然に足が向く。
それだけ。

そうしてまた、私はあの肖像画の前で足が止まり、目が留まる。

私はこの絵に何を期待しているのだろう。

でも、答えは出ない。
肖像画は、何も応えてはくれない。

そりゃそうだ。
だって、ただの絵だもの。
答えてくれたらホラーだよ。
そう思うと、自然に笑みが出てきた。

あ、久しぶりかも。笑ったの。
苦笑いまでしてしまった。
今日は笑顔の大盤振る舞いだ。

肖像画に再び目をやった。
少しは期待でもしていたのかもしれない。
何か得られるかもって。

私は何を願っていたんだろう。
ぼんやりと、くだらないことを考えていると。
気配を感じた。

額縁 2-3

あの時と同じ。

この肖像画は、なぜか他の絵から離されている。
私と一緒で、他の絵から取り残されて一人ぼっち。

私自身を見ているようで。
この絵に嫌悪感を覚えずにはいられない。

だから私は、この肖像画が気になっているのかな。

留学先をこの地に決めたのは。
あの当時を思い返したかったのかな。
私の欠けた、心のピースを埋めるために。

ううん、違う。
たぶん……。

ふと、不意に、誰かの影を感じた。
珍しい。客がいないこの美術館に。
その気配は、私の近くで止まって動かなかった。
何だろう。

「おねぇちゃん。この絵、好きなの?」
その気配は私の背よりも小さく、声は幼い子供のものだった。
私は決してその声の方向に、目をやることはなかった。
けれどもその気配は動きそうに、ない。

私は一人になりたくて。
どうでもいい、とばかりに、投げやりに。

「そうね。この肖像画の人、素敵よね」
いい加減な返事をした。
小さな気配には目も向けず、私はただ、目の前の肖像画を見ていた。

だって怖かったから。
その小さな気配の持ち主が。

過去の私を見るようで、思い知らされるようで。
あの頃の私の、心を暴かれそうで。

どうしようもない苛立ちが。
ずっしりと。
私の心に重い影を、重い碇を、その存在感を大きくしていく。

だから。
私は、その私の影を、見るのが怖かった。

私自身で思い返すならまだしも。
その目に見えない感触は、足元から這い上がってきて。
当時のあの頃の私を、再び思い出させる。

胸が締め付けられるほどに痛くなる。
息苦しくなる。

私は緊張から、その声に振り向くことが出来ないでいる。

暫くすると、私の隣にあった影が無くなった。

ようやく、私はほっと安堵に息を吐くことが出来た。

私はそうしてそのまま、その肖像画を見ていた。

額縁 2-2

『一人で観ているように』

両親は私にそう云って、二人でどこかに行ってしまった。
ぽつん、と、一人、置いてけぼり。

まるで未来を予見しているみたいだったな。

私は特別、美術品が好きだったわけでもない。
両親は、なんでこんな場所に私を置いていったんだろう?

受付に人が居るだけで、客が誰も居ない美術館。
まるでここだけ空気が固まっていて。
時間が止まったように感じ取れる場所だった。

異物の私が入ることで。
私の行動と合わせて、空気と窓から差し込む光に溶け込む埃だけが動く。
その佇まいは今も変わらない。

その空気に私が取り込まれるように。
不思議と安心感に包まれる雰囲気が、ここにはある。
私はこの景色の中に溶け込むようで、心地よかった。

両親はおとぎ話が好きな私のために、ここに連れてきたのかな。
言葉が通じなくても、ここなら私が一人で暇が潰せると思ったのかな。

あの時も。今も、泣けない私がいる。
私には可愛げが無い。
他人が見れば、今もそうなんだろうな。

あの時泣いていれば。
状況は何か、変わったのかな。

いくらそう思っても、私は泣けない。
だから、誰からも愛されない。
両親からすらも。

けれど、それはすでに終わったこと。
今は、どうでもいいことに思えた。

そんな風に思う私は、私には。
人として、何か、大切なものが欠けているのかもしれないな。

私は過ぎし日を思い返しながら、一つの肖像画の前に立ち、想見していた。
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