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雀(エピローグ)

『やれやれ。もう人間と関わりたくないもんだね』
腹を下した雀(A)は、爺さんを連れてきた雀(B)にブツブツグチグチと呟きます。
それに呼応するかのように、雀(B)は答えます。

『そうかい? 俺が連れてきた奴は、結構評判がよかったみたいだぞ』
その会話に雀(C)が参加してきました。
『まぁ、そう云うなよ。もう金輪際こんなことが起きることはないだろうからさ』


『でもさ、笑えるよな』
雀(A)が仲間の雀に云うことには。

俺の腹を下した原因を作ったじいさんにゃ、
土産と称して俺たちの庭から出てくる不用品を入れておいてやったんだよ。
大小、どっちにもね。
さぞかし困ったことになっただろうな。
しししっ。

そう楽しそうに笑う雀(A)でしたが、
それは人間にとっては屑ところか大変なお宝でありました。


『おまえ、そんなこと、したのか……』
呆れる雀(B)に、
『そうさ、あいつ等が悪いんだろう』
雀(A)は心底楽しそうに笑います。

過ぎてしまったことはどうしょうもない。
雀(B)はそれ以上追及することはしませんでした。
が。しかし。

『長老から云われなかったのか? きちんと接客しろって』
チクリ、と釘を刺しました。

むかり、と腹が立った雀(A)は、
『なんだよ、偉そうに。
そういうお前はあの葛籠に何を入れたっていうんだ?』
そう問われた雀(B)は
『俺たちが大切にしている貴重な食料を分けてやったんだ』
平然と答えました。
それを聞いた雀(A)は、唖然としてしまいました。

ようやく我に返ると、
『え? マジでかよ』
雀(A)は、雀(B)に呆れ顔を寄越します。
そんな視線をものともしない雀(B)は、
まぁ喜んでくれるといいんだけれどな。
誰に聞こえるでもなし、ぽつり、呟きました。


――雀にとって、金物類は邪魔なゴミでしかなく。
雀にとって、虫は大変貴重な御馳走でした。

そうです。爺さんに渡した葛籠に入っていたのは。
雀の大切な食糧でもあり、
その中でも雀にとってはえりすぐりの超一級品ばかりだったのです。


価値観というのはまるで違うもの。
雀(A)の思惑は見事に外れ、正直者のじいさんたちは、人間界で貴重な金銀財宝を。
雀(B)の思惑は見事に外れ、雀の大切な食糧は、爺さんたちにとっては恐怖のものでしかありませんでした。

尚且つ、その価値を知るじいさんたちが、それらを売り払い、
結果、金銀財宝へと変化させてしまい、
その富をじいさんたちが全て受け取ってしまったのです。

結局、雀(B)が期待した、爺さんが喜ぶ顔などは見ることも出来ずにいました。

そうしてその後の爺さんたちは、あんな事が二度とあっては困ると考え、
鳥たちとは縁のない生活をのんびり送ることになったのです。
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雀(隣の家)10

「これはいいお宝じゃ」
じいさんはカサカサ動く箱の中身の音を耳にし、
「けれど生もんだよ、あんた。すぐにどうにかしないといけませんよ」
ばあさんは箱から虫が出てこれないように、しっかりと綱で縛ります。
「いい考えがある。だから引き取ってきたんだよ」

じじばばは頭を突き合わせながら、ひそひそと相談しました。

「じゃ、今から行ってくるかいな」
じいさんがどっこいしょ、と大葛籠を背負うと、
「はいよ、行ってらっしゃい。明日は御馳走だねぇ」
ばあさんはにこやかに返します。

まったくのう。正直に、隣の爺さんたちに話すもんじゃ。
うしししし。
じいさんの笑いは一向に止まりません。

うきうきしながら、爺さんは、山向こうの村へと歩みを進めます。


やれやれ、やっとついた。
半日かけてじいさんは、お目当ての門戸の前に着きました。

よっこらせ。
もう一息とばかり、じいさんは気合を入れて、戸に手をかけます。

「ごめんよ。いるかい?」
声をかけると数秒もせずに、奥から人が出てきました。
「おや、ご無沙汰だね。今日は何かよい出物でもあったのかい?」
そう云って奥から出てきたのは、腰の曲がった中年男でした。
ずり落ちそうな眼鏡をくいっと上げて、じいさんの顔を覗き込みます。

その男の顔を見るなり、じいさんは勿体ぶった態度を示しました。

「ほう」
男は期待しているとも、してないともいえない表情になりました。

じいさんは、少しムッとしながら葛籠を下ろします。
「先だってのは、二束三文だったからねぇ」
にやり、といやらしい笑い方をされても、じいさんはめげません。

じいさんは勿体ぶった調子で葛籠の箱に手をかけました。

ぱかり。

葛籠に入っていた虫を見せると、その男は驚き、感嘆の声を上げます。
「おいおい。こんな高級品。どこで手に入れたのかい!!」
男は葛籠に入っている色々な虫を見やり、じいさんを凝視しました。
けれども、じいさんは何食わぬ顔で、ひょうひょうと答えます。
「そりゃ、企業秘密ってやつだよ。
でどうだ? 買い取ってくれるか?」
「もちろんだ!」
じいさんの持ってきた虫は、その男が全て高値で買い取りました。

しししし。
大きな皮袋に大金を入れ、じいさんは半日かけて元来た道へと帰宅の途につきます。
喜びが大きい分、山道への苦労などどこ吹く風で、足取りも軽くなっておりました。

その額、先日じいさんが雀から貰った葛籠に入っていた金銀よりも多かったのです。
ほくほくしながらじいさんは大金を手に、ばあさんが待つ家に帰っていきました。


薬屋に葛籠の虫全てを高値で売った、正直もんのじいさんばあさんは大金持ちになり、
一生遊んで暮らしましたとさ。

雀(隣の家)9

箱の中から、ありとあらゆる虫が出て来たのです。

「「うぎゃーー!!」」
爺さんと婆さんは出て来た虫に驚いて、腰を抜かして慌てふためきます。

一緒に見ていた正直者のじいさんは。
「こりゃ大変だ! ワシ等が捨ててきてやろう。
ばあさん、手伝えや!」
「はい、じいさん」
阿吽の掛け声で、二人はさっさとその大籠を持って出て行ってしまいました。

その行動の速さに、爺さんと婆さんは呆気にとられ、ポツンと取り残されます。
そうしてその場はあっという間に、静寂に包まれていきました。


…………。

「やれやれ、全く大変なことになったもんだ」
爺さんがぽつりとつぶやくと、
「欲はかくもんじゃ、ないですね。所詮は獣ですよ。
騙されたんですよ。命があっただけ、よかったじゃないですか」
我に返った婆さんが慰めます。

「そうだなぁ」
爺さんはしんみりと答えながら、
あれだけ楽しく過ごさせてくれたというのに。
雀たちとの酒盛りを、ぼんやりと思い返しておりました。

「まぁ、楽しい夢を見たと思えばいいじゃないですか」
どっこいしょ。婆さんは立ち上がると、
「そうかのう」
爺さんは納得しかねつつも、婆さんの云う通り、夢と思うことにしました。

そうして、爺さんは、婆さんに雀のお宿に連れていかれたことを
楽しげに話しました。
そうして、葛籠を貰って、気づくと家の前に居て。
そうして、じいさんに云われるまま、葛籠を開けたところまで話すと。

思い出したように爺さんは呟きました。
「そういえばなぁ。
あんな大量の虫を捨てに行ってくれた、隣のじいさんたちに感謝せねばな」
「そうですねぇ」
と、二人は呑気なことを話しておりました。


がしかし。
その頃、大葛籠を持って家に帰っていった正直者のじいさんとばあさんは。

「ししし。まったく、無知というのは恐ろしいもんだね」
「そうだなぁ、ばあさん」
引き取ってきた大籠を前に、二人は狂喜乱舞しておりました。

雀(隣の家)8

満腹じゃわい。
そうこうする内に、爺さんの腹も心も満たされていきました。

あぁ、ここはどこだったっけなぁ?
爺さんはふと、奇妙な違和感を持ち始めます。
あぁ、そうか。
ばあさんが待っておるのう……。
ぼんやりとした頭で、爺さんは家に帰りたいと告げていました。


爺さんは長老に
『どちらがよろしいですかな?』
そう告げられておりました。

その言葉に、爺さんはじいさんに聞かされたことを思い出してきました。

……本当に、こんなことがあるもんだなぁ。
目を丸くしながら、爺さんは目の前に置かれた大小の葛籠を眺めます。


―――「もし同じことが起きたら、絶対に大きな葛籠を選ぶんだぞ」
じいさんは爺さんに近づきながら、こっそりと耳打ちします。
「どうしてだ?」
いきなりのことに、爺さんは身をよじります。
「そりゃもちろん。俺に対する情報提供料だ。
いいか、分け前の半分、きっちりと渡すんだぞ」

そういうものかいなぁ? 
と爺さんは疑問を持ちはしましたが。
「お、おう。わかった。まぁ、そうなれば、な」
爺さんはじいさんの迫力に押されて、わかったと答えてしまいました。


じいさんに云われた通り、爺さんは、迷わず大きな葛籠を選んでいました。

ぼんやりした頭をもたげながら、大きな葛籠を背負いつつ。
爺さんは元来た道を雀に船頭されながら、帰宅の途へと着きます。

キツネにつままれたように、ぼんやりする頭を持ちながら帰宅すると。
そこには、隣の家のじいさんとばあさん。
そして、爺さんの帰宅を今かと待っていた婆さんがおりました。

「心配したのですよ!」
婆さんが爺さんを見つけると、そう叫びましたが。
一目散に爺さんに駆け寄ってきたのは、じいさんでした。

「おぉおぉ、ほれみろ。やっぱり葛籠を貰ってきたじゃないか!」
はしゃぐじいさんに、頭がまだ働かない爺さんは、そうだなぁ。とだけ返しました。



「ほれ、さっさと開けてみろ」
じいさんに急かされるまま、爺さんは葛籠の紐を外そうとします。
けれど、しっかりと結ばれているせいで、中々外せません。
悪戦苦闘している爺さんを尻目に、じいさんの内心は、うっきうきしています。

――ワシが貰ってきたのには、大判小判が入っておった。
こんなに大きい葛籠を貰ってきたのだ。
数えきれないくらいの金銀財宝が入っているはずだ。
じいさんは一人、うしうしといやらしい笑いをしておりました。

「ようやく結び目がほどけたわい」
汗を拭き拭き、苦労して取った紐を手にし、爺さんは箱を開けようと手をかけました。

「何が出てくるかな」
じいさんは、ウキウキしながら、箱が空くのを今や遅しと待っております。

「それ!」
ぱかり。

爺さんが蓋をあけると。
その中には皆が思いもしないものが入っておりました。

雀(隣の家)7

『そうか。大役、よく果たしてくれたのぉ』
長老はそれだけ云うと、客人である爺さんを迎えるため、
その場から去りました。

一羽、ぽつんと残された雀に、
『よう。ごくろうさん』
傍らで見ていた仲間の雀が声をかけてきました。
二三、言葉を交わすと、
『しばらくお前も末席で、ご相伴にでも預かってこいよ』
にやにやしながら仲間の雀は提案してきます。
いつもなら無視するはずが、雀は疲れきっていたこともあり、
『そうだな』ぽつりと呟くと、その場から羽根を運びました。

雀が宴会場に羽根を運んだ時には。
すでに爺さんは大満足で出来上がっており、料理に舌鼓を打っております。

「婆さんに悪いのう」
云いながらも、爺さんの手にした箸は止まりません。

「こんな御馳走、よいのかのう」
時折、勧められる酒を、注がれるままに飲み干していきます。
一口含むことに、頭が段々と朦朧としていましたが。
酒のせいと、爺さんは全く気にもとめません。


『まぁま、楽しんでいってくだされ』
爺さんの隣に座る長老もまた、酒も料理も増々爺さんに勧めます。
そうして、いつしか酒で口が軽くなった爺さんに。
長老は何でもないようにたずねます。

『して、どうしてこのようなことをなさったのですか?』
尋ねられるまま、爺さんは、正直者のじいさんの事の顛末を喋りました。


それを聞いていた若い雀たち。
『やっぱ、そうじゃん』
ひそひそと、耳打ちを始めます。
『でもさ、この前に来た人間。あれだけ痛めつけたのに、何で真似るかね?』
『人というのはわからん生きもんだな』
『でもさ。こいつの家の食べもんで、誰も腹は下してないんだろう?』
『この爺さんの庭には、きちんと食べれるモンがあって、
山向こうの鳥たちは助かっていたのだろう?』
『そうだよ、いい人間じゃないのか?』
『結果的にそうなった、ってだけじゃねーの?』
『ま、俺たちには関係ねーけどな』
『そりゃそうか』
『でも、あいつをどうするんだろうな?』

末席にいた雀は会話に参加せず、耳だけ傾けていました。
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